冬眠を続けると睡眠不足になる?

冬眠を続けると睡眠不足になる?

ところが奇妙なことに、冬眠の状態は長続きせず、厳寒のさなかにも、ある間隔をおい
て短い目覚めの期間が断続的に繰り返される。このときの脳波をモニターしながら目覚め
た動物を観察すると、意外な事実が明らかになった。
この目覚めの周期は数時間から数Uにわたり、体温が活動期なみに回復する。
冬眠中に深いノンレム睡眠を十分にとっていたとすれば必要以上に出現しないはずの
深いノンレム睡眠が、冬眠直後に最大限に出現するとはおかしなことだ。冬眠が、ノンレ
ム睡眠と共通の方式でコントロールされていたとすれば、冬眠直後は最小限となるはずで
はないか。
こんな矛盾が判明し、従来の常識に改訂が迫られた。そこで、冬眠を続けていると睡眠
不足になってしまうので、睡眠を補給するために目覚めるのではないか、と推論されたの
である。
冬眠は、低体温のもとでの特殊な「覚醒Lの状態であって冬眠を続けることは断眠に
相当するから、ときどき睡眠不足を解消しないと、冬眠、ひいては生命が維持できないの
だ、と解釈されることになったわけだ。いったん目覚めるのは、体温が低すぎると眠れな
いからだ。
極寒の真冬に、こんな無理をしてまでも眠らなければならないという事実は睡眠の役

割の重大さを改めて考えさせてくれるものと言えよう。
もっとも、クマやタヌキみたいに、冬のあいだ巣ごもりしたまま、体温をあまり下げる
ことなく、うとうとしているだけの動物に対しては、これまでどおりの「常識」が通用す
るのだろう。

1日平均四九分の眠りで元気な人がいる

世の中には、ほとんど眠らないのに、人並み以上に元気に活動している人が実在すると
いう.こんな人を「無眠者」と呼ぶ.睡眠不足を訴えることなく、疲れも知らず、きわめ
て健康に生活しているごく少数の人たちのことだ.無眠者がいることは、睡眠の無用さを
実証することにはならないか。
イキリスのレイ・メティス博士によると、一夜平均四九分しか眠らないで七○年も元気
に活躍している女性とか、記録をとった一四夜のうち九夜しか眠っておらず、一夜の眠り
も二○分から三時間までという男性など、数人の無眠者がいる。一六歳以降は、一夜に一
五分以上は眠ったことがないという中年男性も実在するとのことだ。
これほど極端な短眠の背景にどのような脳機構が作動しているのか、よくわかっていな
い。おそらく、普通の人なら睡眠中にしかできない機能が、覚醒中にうまく実行できるの
だろう。無眠者といってもま(↓たく眠らないのではなく言ほんのわずかの睡眠でこと足
りるという点に意味がありそうだ。このような睡眠に無縁な人たちでさえ、ときどき少し
は眠っているという事実こそ、示唆的と思われる。

 

不眠の訴え